メールや電話でお断りをする際、「出来かねる」「致しかねる」という言葉がよく使われています。
この二つの違いがわかりますか?
日本語は同じ意味でも様々な表現方法があります。
敬語の使い方、伝わり方次第では大きなクレームに繋がることもあります。
ビジネスにおいて、敬語のマナーには片時も気を抜いてはいけません。
特に、お断りをする際は神経を使わなくてはいけません。
そこで今回は、ビジネスシーンやメールで役立つお断りの言葉、『出来かねるの使い方と致しかねるとの違いは何か?』を詳しくご紹介します。
社会人の嗜みとして、言葉遣いのマナーをしっかりと身につけておきましょう。
ビジネスメールでよく見る「出来かねる」の使い方
何かをお断りする際によく使われる「出来かねる」という言葉、簡単に言うと、「できません」という意味で使われています。
メールや電話などで「できません」という直接的な表現をしてしまうと相手に対して無愛想で冷たい印象を与えてしまうため、婉曲して言葉を柔らかくした表現の仕方です。
オンラインショッピングの注意事項でよく見る「商品の返品交換は出来かねる場合がございます」「返金は出来かねるためご注意ください」であったり、
夜行バスの文言で「運転中などご対応出来かねる状況の場合は~」など、よく目にする文章ですが、
結局のところ出来るの?出来ないの?と混乱してしまうことはありませんか?
実は、婉曲した表現を付け加えられる「~かねる」という言葉には他にも複数の意味を持っています。
どのような意味を持っているのか確認してみましょう。
【「~かねる」の意味】
- 「~できない」「~するのは難しい」
- 「~する可能性がある」「~しそう」
「~かねる」という言葉には、それ自体で「できない」という意味が含まれています。
「出来かねる」というよく耳にする言葉ですが、よくよく考えてみると不自然な表現だということがわかります。
意味はわかりますが、日本語の表現としては間違いです。
「出来かねる」と「致しかねる」の違い
出来かねるという言葉は日本語としては間違いだということをご説明しましたが、
インターネット上の文章やコールセンターなどでも使われ続けているのが現状です。
何とか意味は通じるので使ってもかまいませんが、
相手が言葉に厳しい方であれば不快な思いをさせてしまう可能性は拭えません。
お断りをする言葉ですので、より慎重に、丁寧にお伝えする方がトラブルを回避できて無難かもしれません。
正しい言葉でより丁寧なお断りをするのであれば、「致しかねる」という言葉を使いましょう。
一見どちらも同じような意味に感じますが、「出来かねる」と「致しかねる」には日本語の使い方として明確な違いがあります。
言葉を分解してこの二つの言葉の違いを見てみましょう。
- 「出来かねる」
- 「致しかねる」
「出来かねる」という言葉は、可能性を表す「出来る」と否定や可能性を表す「かねる」が合わさった言葉です。
分解して簡単に表現すると、「できる」ことが「できない」というイメージの言葉となります。
「致しかねる」という言葉は「する」の謙譲語「致す」と「かねる」が合わさった言葉です。
「する」ことが「できない」という意味の言葉をへりくだって表現しているので、日本語として正しい使い方です。
よく似た印象の言葉ですが、この二つの言葉は大きく違います。
違いをよく理解して正しい言葉を使うように心がけてください。
「出来かねない」の意味
稀に、「出来かねない」という言葉を使っている方も見受けられます。
「出来かねる」は、日本語的に間違っている言葉だということがわかりましたが、
では、この「出来かねない」は一体どういう意味なのでしょうか。
「~かねる」という言葉は否定の形にすることによって「~しそうだ」という意味を強く持ちます。
わかりやすくするために、次の文章を読んでみてください。
- 『この辺りの道路は舗装がされていないので、子供が転びかねない』
この文章の意味は、子供が転んでしまうかもしれない、転んでしまいそうだという意味です。
前についた言葉の可能性を表しています。
これを「出来かねない」という言葉に当てはめてみるとどうなるでしょうか。
- 『今晩は特に予定がないので残業出来かねない』
- 『空き地に新しいマンションが出来かねない』
前者の文章は、残業が出来てしまうかもしれない、残業してしまいそうだという意味になるのでしょうか。
辛うじて意味は伝わりますが、否定的な印象が全面的に出てしまっています。
後者の文章は、可能性を表す「できる」ではなく、今までなかったものが存在するようになるという意味の「できる」という言葉を使っています。
他の言葉で言い換えれば、新しいマンションが建つかもしれない、建ってしまいそうだという意味となります。
後者の文章は日本語としての間違いがなく正しいですが、前者の文章にはやはり違和感を感じます。
可能性を表す「できる」という言葉には「かねる」をつけるのは無理があるようです。
敬語のマナーだけでなく誠意の心遣いも
どちらにせよ、「できません」という否定、拒絶の言葉ですので、たとえ柔らかい表現をしたとしても相手は遮断された印象を持ってしまうのではないでしょうか。
中には「わざわざまどろっこしい言い方をして!」と不快に思う方もいらっしゃいます。
お断りをする際はできる限り敬語のマナーに沿って丁寧な表現をするように心がけ、「できなくて申し訳ない」「どうにかしようとしたけどどうしようもない」という誠意を持った言葉を添えてお伝えするようにしましょう。
誠意を持って接すれば相手にも必ず伝わるはずです。
デキるビジネスマンになるためには、敬語の使い方とマナーだけでなく、心遣いも忘れないことが大事です。