日常生活で確認のために使われる「念のため」という言葉。
ビジネスシーンに於いても会話やメールで使うことが多々ありますが、この「念のため」という言葉は、果たして敬語なのでしょうか。
もっと丁寧な言い方はないでしょうか。
よく使う機会が多い言葉だからこそ「念のため」の意味や言い換えに使える類語や例文についてなど気になることがたくさんありますよね。
そこで、今回は『念のためのビジネス敬語としての使い方や意味について』及び『念のためを言い換えるための類語や丁寧な言い方について』さらに、『念のためを使った例文』についてご紹介いたします。
「念のため」の英語表現やビジネスシーンで使える英語の例文も紹介していますので、是非ご参考ください。
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「念のため」の意味とビジネス敬語としての使い方
「念のため」は、「ねんのため」と読み、「万が一に備えて確認のため」という意味合いで使用されます。
「念」には「注意」という意味があります。
「ため」は形式名詞という名詞で意味はありません。漢字で書くと「為」となりますが、形式名詞はひらがなで記載する、という文法に於いての約束事がありますので、「ため」と書きます。
「念のため」と似ている言葉に「一応」「とりあえず」という言葉があります。
この2つの言葉との違いは、ビジネス敬語として使えるか否か、という点にあります。
- 「念のため」ご報告します。
- 「一応」ご報告します。
- 「とりあえず」ご報告します。
ここに例文を並べてみましたが、「一応」や「とりあえず」を使用した場合、とても曖昧で不安定な表現になることが伝わりますでしょうか。
「念のため」は万が一のことを考えて確認しておきたい、という意味合いがありますが、「一応」や「とりあえず」に変えると、しなくてもいいかもしれないけれど報告をします、という意味合いになり、「心配」や「誠意」の気持ちが欠けています。
また、ビジネスシーンでは、曖昧な物言いを嫌います。不確定の事項を口に出すと誤解につながるからです。
以上のことから、「一応」及び「とりあえず」はビジネス向きではありません。
「念のため」は前述したとおり、「万が一に備えて確認のため」という意味がありますから、ビジネスシーンでは報告や連絡、念押しや催促等に非常に有効に使える言葉です。
この言葉を添えるだけで、優しい印象になります。
例えば、「〇〇の書類に不備がないかお確かめください。」と言った場合と、「〇〇の書類に不備がないか、念のためお確かめください。」と言った場合では、後者の方が優しい印象を受けます。
それはどうしてかと言いますと、「念のため」を付けることによって、「あなたのことは信頼していますが、より確実にしたい」という意味が付加され、こちらの立場を一つ下げた言い方になるからです。
「念のため」は丁寧な言い方なのか
「念のため」という言葉自体は敬語ではありません。
しかし、前述したとおり、こちらの立場を下げた言い方になりますので、十分丁寧な言い方と言えるでしょう。
上司や目上の方に使用しても失礼にはなりません。
確認したいことや連絡事項、報告があった場合は、「念のためお伝えしたいのですが、」等の言い回しで使用してみましょう。
また、取引先の方に依頼したことについて確認したい場合も、「~について念のためご確認いただけますでしょうか。」といった形で使用できます。
「念のため」と同じ意味の言葉にもうひとつ、「為念」という言葉があります。これも読み方は「ねんのため」です。漢文調の言い回しで、意味は「念のため」と同じなのですが、こちらは一般的でないため、使わない方がベターです。
「念のため」の類語
念のための類語には、以下のようなものがあります。
大事をとって
「大事をとって」には、「物事を軽々しくみずに」「物事を深刻に捉えて」「余裕をもたせるため」という意味があります。
「大事をとって、仕事を休ませていただきます」という言い方をしますが、これは「病気を他の人にうつすかもしれないので、それを深刻に捉えて、休ませていただきます。」といった意味になりますよね。
気になるのは、「大事をとって」がビジネスシーンで使える言葉かどうかですが、結論から言いますと、使えますが、使えるシーンが限定されています。
「大事をとって」が使えるシーンは、お休みをいただく時くらいのようです。その他の場合は、「念のために」を使った方がよいでしょう。
万が一のため
「万が一のため」は、「もし~が起こってしまった時のための予防として」という意味があります。
「念のため」と比べて起こる確率が低いことを予防するための言い方です。
- 「念のため、ご連絡先をお聞かせ願えますか」
- 「万が一のため、ご連絡先をお聞かせ願えますか」
2つの例文を比べると、後者の方が実際に連絡をする可能性が低い場合の言い回しとなります。
「念のため」を使った例文
「念のため」を使ったビジネスシーンでの例文をいくつかご紹介いたします。
- 参加者の人数を、念のため確認をさせていただきます。
- ご存じのことと思いますが、念のためご連絡させていただきました。
- 会議の時間について、念のためお知らせいたします。
- ~の件について、念のためご報告させていただきます。
- 念のためお電話番号をお聞かせ願えますでしょうか。
- 前回の会議で使用した資料を念のため共有させていただきます。
- 念のための確認ですが、待ち合わせ場所は◯◯でよろしいでしょうか。
報告や連絡、確認の際によく使われる言葉ということがわかりますね。
「念のため」の英語表現
「念のため」の英語表現は以下になります。
- just in case
- just to be sure
- just to make sure
- Just to be safe
- Just for the record
次にビジネスで使える英語の例文をいくつかご紹介いたします。
- I attached the file just to make sure.
- Let’s meet up at 9:30 am tomorrow just to be safe.
- Please tell me your phone number just in case.
念のためファイルを添付いたしました。
念のため明日は9時30分に集合しましょう。
念のため電話番号を教えてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「念のため」の使い方を学ぶとともに、普段何気なく使っている「一応」や「とりあえず」という言葉の不安定さについてご理解いただけたと思います。
また、「念のため」のように、厳密には敬語ではないけれど、ビジネスシーンで使用することができる、丁寧な言い回しは他にもありますので、視野を広く持ち、たくさんの言葉を使いこなせるビジネスマンになりましょう。